法定相続情報証明制度
(1) 法定相続情報制度とは
① 法定相続情報制度とは
「法定相続情報証明制度は,登記所(法務局)に戸除籍謄本等の束を提出し,併せて相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を出していただければ,登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付します。」法務省HPより抜粋
法務省の説明では分かりづらいので、解釈を加えますと
申出人(相続人)が、法務局に法定相続情報一覧図(以下「一覧図」といいます)の保管及び写しの交付を申し出、法務局が当該一覧図を保管するとともに認証を付した一覧図の写しを申出人に交付する制度といえるでしょう。
一覧図は、法務局指定の相続関係説明図のようなもので、法務局(登記官)が、一覧図の写しに認証を与えることで、当該一覧図の写しに法務局のお墨付きを与える制度ともいえます。
流れを付け加えますと、
⒈ 申出人が、法務省の指定する様式の法定相続情報一覧図(以下「一覧図」といいます)を作成します。
⒉ 法務局に、⒈の一覧図とその作成の元になる全ての戸除籍謄本等(以下「戸籍等」といいます) 及びその他必要書類を提出します。
⒊ 登記官が、戸籍等を調査し、相続人が一覧図のとおりであることが確認できたら、法務局で当該一覧図を保管(5年間)するとともに、一覧図の写しの下部にその旨の認証を行い、申出人に当該写しを交付します。
⒋ ⒊の登記官の認証により、一覧図の写しをもって全ての相続人が確認できることになります。
② 法定相続情報一覧図とは
法定相続情報一覧図は、いわゆる相続関係説明図と考えていただいて大過ないと思われます。ただし、原則として、相続人以外の氏名を記載しないなど、法務局が定める様式で作成しなければなりません。(平成30年4月1日より「本籍の記載」については推奨すると変わりました)
一覧図の具体例が法務局HPにあげられていますので、参考にしてください。
法務局トップページ>新着情報一覧>主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000015.html
③ 一覧図の使用例
相続人確定に必要な全ての戸籍等の代わりに、一覧図を使用することができます。
1. 法務局に提出する登記申請関係(被相続人名義)
・表示に関する登記の例
一般承継人による表示に関する登記 区分建物の表題登記 土地所在図の訂正など
・権利に関する登記の例
相続登記 所有権保存登記
参考 不動産登記法規則37条の3
第37条の3 表題部所有者又は登記名義人の相続人が登記の申請をする場合において、その相続に関して第二百四十七条の規定により交付された法定相続情報一覧図の写しを提供したときは、当該写しの提供をもって、相続があったことを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報の提供に代えることができる。
⒉ 銀行・証券会社等の相続による解約・名義書換えなど
従来は、金融機関等の相続手続きの際には、戸籍等を持参し、銀行等の担当者(担当部署)が確認しておりました。これからは、一覧図を使用できる金融機関等では、一覧図1枚を戸籍等の代わりに使用できます。戸籍等の束を持参する手間、確認まで待つ時間を省くことができます。
注意 金融機関等によって取扱いが異なりますので、必ず事前に一覧図を使用できるかご確認ください。
⒊ その他、行政機関への提出
相続税の申告などに戸籍等の代わりとして使用できます。
また、役所等での手続きの際にも相続人であることを示す戸籍等の証明書類の代わりとして使用できます。
④ 法定相続情報証明制度のメリットデメリット
メリット
③のとおり、戸籍等の代わりに一覧図を使用できるため、相続手続きがスムーズに行われます。
・代襲相続、兄弟姉妹の相続などの場合
・相続人が複数いる場合
・相続人が遠隔地にいる場合
・複数の金融機関で名義書換えを行う場合
今までは戸籍等の束の提出が必要であり、原本還付を求めた場合には、全ての戸籍等の写しが必要でしたが、一覧図があれば原則1枚で済み、簡単かつ時間短縮になることもメリットです。
また、各相続人分作成すれば、作成後は各相続人が個別に戸籍等を取得或いは相続人間で送付する必要なく、各人が手続きを行うことが可能です。
デメリット
・申出に手間がかかる。
・指定のとおりの一覧図を作成しなければならない。
名義書換え等が市内や近隣などで全て手続きが可能な場合には、わざわざ法務局まで行かなくても、従来どおり戸籍等を持参し、直接銀行などで手続きをした方が早いと思料します。
(2)法定相続情報証明制度の手続
① 利用できる方(申出人になることができる方)
被相続人(お亡くなりになられた方)の相続人(又はその相続人)です。ただし、原則として、戸除籍謄抄本を提出することができない人(外国籍の方など)は利用できないようです。
申出人から委任を受けた親族
司法書士、弁護士等一定の資格者も可能です。
② 申出の場所
申出をする場所は、登記所です。日本全国どこの登記所でも可能ではなく、以下の登記所で可能です。
・被相続人の本籍地(死亡時の本籍を指します。)
・被相続人の最後の住所地
・申出人の住所地
・被相続人名義の不動産の所在地
③ 申出に必要な書類(委任による場合を除く)
⒈ 法定相続情報一覧図
⒉ 申出書
申出書の雛型が以下にありますから、ご利用ください。
法務局トップページ>新着情報一覧>法定相続情報証明制度の具体的な手続について
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000014.html
STEP3 申出書の記入,登記所へ申出
⒊ 被相続⼈(亡くなられた⽅)の⼾除籍謄本
出⽣から亡くなられるまでの連続した⼾籍謄本及び除籍謄本
⒋ 被相続人の住⺠票の除票(被相続人の除票が廃棄されている場合には戸籍の附票)
⒌ 相続⼈の⼾籍謄抄本(全ての相続人のもの)
⒍ 申出人の本人確認情報
・運転免許証
・マイナンバーカードの表面のコピー
・住民票の写しなど
* 上記の写しに原本に相違ないと記載し、記名押印する必要があります。
一覧図に相続人の住所を記載する場合
⒎ 相続人の住民票の写しなど
印鑑登録証明書を住民票の代わりに使用できる登記所もあります。
詳細は申出先の登記所にお尋ねください。
* 専門家などに委任する場合には、必要な書類などは、専門家にお尋ねください。
(3)法定相続情報証明制度の具体的な手続
法定相続情報証明制度の具体的な手続は,次のとおりです。
STEP1 必要書類の収集
STEP2 法定相続情報一覧図の作成
STEP3 申出書の記入,登記所へ申出 (法務局HP抜粋)
(4)再交付の申出
一覧図の写しが、何らかの理由により、さらに必要となった場合は、再交付を受けることが可能なようです。
① 請求ができる方
「当初の申出において申出書に「申出人」として氏名を記載した方です(申出人とならなかった他の相続人は,再交付を受けることができません。)。」(法務局HP抜粋)
上記のとおり、申出人以外の相続人は再交付を求めることができません。したがって、相続人間であまり交流がない場合には、申出の際に、どなたが申出人になるのか、各自が申出を行うかなど確認した方が無難であると思料します。
② 再交付の期間
「法定相続情報一覧図は,5年間(申出日の翌年から起算)保存されますので,この間であれば再交付を受けることができます。」(法務局HP抜粋)
③ 再交付に必要な書類(委任による場合を除く)
⒈ 申出人の本人確認情報
(2)③の⒍の申出人の本人確認情報と同様です。
⒉ 申出書
一覧図申出書同様、法務局HPに雛型があります。
④ 再交付申出の場所
当初申出を行った(一覧図が保存されている)登記所です。
* 申出書の雛型や必要書類などは、以下をご覧ください。
法務局トップページ>新着情報一覧>法定相続情報証明制度の具体的な手続について
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000014.html
「一覧図の写しの再交付を受けたい場合」
法定相続情報証明制度については、法務局のHP「法定相続情報証明制度について」を参考にさせていただきました。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00284.html