相続手続きの前に
・被相続人(亡くなった方)の⼾除籍謄本(以下「戸籍等」といいます)の収集
被相続人の戸籍等を収集する意味
被相続人の戸籍等を収集する理由は、戸籍等により被相続人の全ての相続人を確定することにあります。それ故、生まれた時からお亡くなりになった時までの連続した被相続人の戸籍等が必要です。一部でも抜けている場合、抜けたところに相続人が存在する可能性が生じてしまいます。法務局など、一部でも戸籍等が抜けている場合には、原則として認められない場合もございます。全ての戸籍等を収集するようになさってください。
相続登記の義務化について
相続登記が義務化されることが決まりました。
施行日は、2024年4月1日であり、それ以降は相続登記が義務化されます。
相続の発生により、相続人であること及び被相続人名義の不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります。
遺言に関すること
1 遺言(公正証書遺言を除く)を発見した時には
家庭裁判所による検認が必要です。期間はありませんが、発見後、遅滞なく検認の申立てをしてください。なお、封のある遺言を勝手に開封すると過料を科される場合がありますのでご注意ください。
2 家庭裁判所の検認とは
検認とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。注意すべきことは、遺言の有効・無効を判断する手続ではないことです。従って、検認を経た事実のみをもって、その遺言が有効だとは判断できません。
3 検認の申立てについて
(1) 検認の申立先
遺言者の最後の住所地の家庭裁判所
(2) 申立人
・遺言書の保管者
・遺言書を発見した相続人
(3) 必要な書類など
① 申立書
② 標準的な申立添付書類
⒈ 遺言者の出生から死亡までの全ての戸籍、除籍、改製原戸籍謄本(以下「戸籍等」)
⒉ 相続人全員の戸籍謄本
相続人が、親、兄弟姉妹或いは代襲相続(本来の相続人が既に亡くなっており、代わりに孫等が相続すること)の場合には、必要書類の追加がありますので、詳細は、家裁又は専門家にお尋ねください。
(4) 申立てに必要な費用
・1通につき収入印紙800円分
・連絡用の郵便切手(申立先の裁判所にお尋ねください)
(5) その他
検認の申立てを行っても当日検認されるわけではありません。申立後、1月ほど経った頃が多いといわれております。また、検認当日に必要な物など、詳細は、申立先家裁にてお尋ねください。
遺言書に関する疑問
・遺言書の内容のとおりに遺産を分割しないといけませんか。
有効な遺言書には、法的拘束力がありますので、原則として、相続人などは、その内容に従わなければなりません。しかし、相続人全員の合意で、遺言書とは異なる遺産分割協議を行っても有効という判例もあります。詳しくは専門家に相談してみてください。
遺産分割に関する事項
1 遺産分割協議(参考)
① 遺言書がないか確認します。
遺言がある場合には、原則、遺言の内容どおりに相続します。
公正証書遺言以外の遺言では、裁判所の検印が必要ですので、勝手に開封などなさらないようにご注意ください。
② お亡くなりになった方(以下「被相続人」と言います。)の財産を確定します。
不動産の場合には、被相続人名義の不動産権利証、固定資産税納付書又は名寄せ帳などを参考にしてみてはいかがでしょうか。但し、保安林などや一部の公衆用道路など固定資産税がかからない場合もありますから、心当たりがある方は、専門家にご相談ください。
特別受益や寄与分にご注意ください。
③ 全ての相続人で、相続財産をどのように分割するか協議します。
⒈ 遺言書がある場合において、遺言の内容に従う。
⒉ 遺産分割協議により、相続財産の分割を決定する。
なお、相続人が一人でも欠けた場合には、遺産分割協議は成立しません。
⒊ 各相続人が、法定相続の割合で相続した上で、協議により財産を分割する。
⒋ 遺産分割調停申立てを行い、当該調停で決定する。
⒌ 上記方法で決着しないときには、最終的に裁判で決定させます。
④ ③の決定に基づき、各相続人が各相続財産を分割取得します。
例 不動産場合には、不動産を取得した相続人が、不動産の所在地の法務局に、相続(所有権移転)登記の申請をします。
2 相続人に関する問題
(1) 相続人の中に行方不明の者がいる。
家庭裁判所で、不在者財産管理人を選任してもらい、当該不在者財産管理人が、遺産分割協議に参加することにより、協議を行うことができます。
(2) 相続人の中に認知症などにより、判断能力が低下して者がいる。
家庭裁判所で、成年後見人など選任申立てを行い、後見人を選任した後で、当該後見人に、本人の代わりに遺産分割協議に参加してもらう方法があります。詳しくは、後見関係業務を参照ください。
相続放棄に関する事項
・財産は、親を見てくれた兄弟に譲りたい。
・債務があり、相続放棄したい。
1 相続放棄について
相続放棄をするには、家庭裁判所に申述(申し述べること)しなければなりません。申述と言っても、実務上、家裁に行って、相続放棄をしますと言うのではなく、相続放棄申述書を提出することが多いでしょう。
(1) 相続放棄をする人
相続人です。未成年者など制限行為能力者が相続放棄をする場合には、その相続人の法定代理人が行います。相続人が親子等で、利害相反がある場合には、特別代理人の選任が必要な場合があります。詳細は、家裁か専門家にご相談ください。
(2) 相続放棄ができる期間
相続放棄には、期間があります。相続放棄は、原則として、自らに相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならないと定められています。相続人が、上記期間(3か月)以内に相続財産の状況を調査しても、相続財産の中身を精査できない場合には、家庭裁判所に相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立てをすることで、その期間を伸ばすことができることがあります。
また、相続放棄の申述期間後に、多額の債務の存在が判明したときなどは、当該債務を発見したときを基準として、相続放棄の申述を行うことができる可能性がありますから、その場合には、専門家にご相談ください。
民法第915条1項
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
(3) 相続放棄(申述)をする場所
被相続人(亡くなった方)の最後の住所地の家庭裁判所
(4) 相続放棄に必要な書類など
① 相続放棄の申述書
② 標準的な申立添付書類
被相続人に関する書類
⒈ 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
⒉ 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
*相続人が孫やひ孫の場合には、被相続人の本来の相続人の死亡の記載のある戸籍謄本等
相続放棄する人に関する書類
⒈ 相続放棄する人の戸籍謄本
相続人が、親、兄弟姉妹或いは代襲相続(本来の相続人が既に亡くなっており、代わりに孫等が相続すること)の場合には、必要書類の追加がありますので、詳細は、家裁又は専門家にお尋ねください。
(5) 申述に必要な費用
収入印紙800円分(申述書貼付)
連絡用の郵便切手(各家裁によります。詳細は、家裁にお尋ねください。)
以上 相続放棄に関しては、裁判所H・P記載事項を参考にしました。
(6) 相続の放棄をした者による管理
民法第940条 第1項 「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」と定めておりますので、注意してください。
参考 2023年(令和5年)4月1日施行 改正民法
民法第940条 第1項 「相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。」