配偶者居住権
(1) 配偶者居住権とは
配偶者居住権とは、「配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身又は一定期間、配偶者に建物の使用を認めることを内容とする法定の権利」のことです。
つまり、夫か妻(以下「妻など」と記します)が所有していた建物に住んでいた妻などが、配偶者亡き後にも、その建物に引き続き、亡くなるまでか、定めた期間まで住み続けることができる権利です。
民法(以下「法」と記します)第1028条参照
1 配偶者居住権の成立要件
① 被相続人の配偶者が、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた
② ア 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき
イ 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき
ウ 配偶者居住権の死因贈与がされたとき 注
上記①と②のア~ウのどれか1つの要件が揃った時に成立します。
注 (参照法第554条)
贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。
2 配偶者居住権の権利者
被相続人の配偶者です。
※ 法律上の配偶者であり、事実婚(内縁)の場合は含まれません。
3 対象物
配偶者が、相続開始時に居住していた被相続人所有の建物です。
被相続人が共有持分(他の共有者が配偶者である場合を除く)を所有している場合には成立しません。
例
× 共有者 被相続人 10分の9 長 男 10分の1 成立しない
× 共有者 被相続人 10分の8 配偶者 10分の1 長 男 10分の1 成立しない
〇 共有者 被相続人 10分の9 配偶者 10分の1 成立する
4 対抗要件
配偶者居住権があることを第三者に主張(対抗)するためには、配偶者居住権の登記が必要です。 参照 法第1031条第2項
登記があれば、建物の所有者が他の人に売却してもそのまま建物に住み続けることができます。一方で、配偶者居住権の登記がされていない場合には、移転等の登記を備えた買主等には、配偶者居住権を対抗できません。その場合には、立ち退きを迫られる恐れも十分ありますし、仮にそのまま居住できても賃料を請求されることも考えられます。取得した場合には早めに登記をお考え下さい。なお、登記に関しては、お近くの司法書士にご相談ください。